恋するリベラーチェ

カンヌ国際映画祭では、スタンディング・オベーションが鳴り止まなかったという映画、『恋するリベラーチェ』を、一足お先に東京国際映画祭で観賞した。
リベラーチェとは、アメリカで一世風靡した実在の人物であり、50年代から30年間、第一線でピアノを用いたパフォーマンスを繰り広げたエンターテイナー。
映画は、リベラーチェと秘書スコットとの恋愛人生を、マイケル・ダグラスとマット・デイモンという名優二人が、渾身の演技で臨んでいる。
年老いて醜い大金持ちのリベラーチェは、誰かを心の底から愛し、愛されたいと思っている。その愛(それが愛かなんなのか僕にはわからないが)は、見ていてあまりにも滑稽であり、哀しく、痛い。
若く魅力に溢れるスコットは、恵まれない生い立ちを背負い、誰かに愛されることをひたすら求めている。その愛(それが愛かなんなのか僕にはわからないが)は、あまりにせつなく、一方的で、見ていて胸が苦しくなる。
幸せの絶頂期に誓った愛は、時の流れの中でいつしか変貌をとげて、憎しみへと変わる。人類はなぜ同じことを、何千年と繰り返し、傷つけ合うのだろうか?
そして、人はこの世で最後に瞼を閉じる時に、確かに誰かを愛して、確かに誰かに愛されていたのだと感じたいのだろう。
この映画は、久しぶりに『1000%のゲイ映画』であり、ゲイの人生を凝縮したような話だ。滑稽で、哀れで、バカバカしく、派手で、痛く、哀しく、そうでありながら、どこか他人事とは思えない。
きっと僕の中には、リベラーチェもスコットもいるのだろう。
★恋するリベラーチェhttp://liberace.jp/sp/

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