もうひとりの息子

六本木では東京国際映画祭が始まった。トヨタがスポンサーでなくなったせいか、開催期間も平日から平日になってしまい明らかに変だし、華やかさにかけていると思うのは僕だけだろうか?久しぶりに来日したトム・ハンクスは、このあいにくの天気の中、楽しんでいるだろうか?などと、好きな俳優なだけに余計な心配ばかりしてしまった。
昨年、東京国際映画祭のグランプリと監督賞をW受賞した作品『もうひとりの息子』を、雨の中、わしわしと銀座まで観に行った。
この作品は、今話題の邦画『そして父になる』と同じ、出生時における子どもの取り違いというアクシデントが元になって展開されるのだけど、この『もうひとりの息子』の出生時の取り違いは、イスラエルとパレスチナという敵対する宗教および国同士で起こってしまう話。
ストーリーにはあえて触れないが、僕の個人的な考えでは、このイスラエルとパレスチナの問題は、気の遠くなるような時間をかけて憎しみが積み重なり、今も憎しみはまた新たな憎しみを生み出し、僕たちの生きている時代では、恐らく解決出来ないのだろうと思われる。
偶然、生まれたところが違うというだけで、信じる宗教が違うというだけで、まったく同じ人間が、なぜこの憎しみを背負わされ、憎しみの連鎖の中で生きていかなければならないのだろうか?
そしてこれは、遠く中東の土地で起きている別次元の話では決してなくて、今、我々の周りの国を含めた世界中で起きている問題であることを改めて思い知らされ考えさせられる。
緻密な脚本と母親役のエマニュエル・ドゥヴォスをはじめ俳優陣の素晴らしい演技に、先の分からない展開をただ息を殺して見守るしかなかった。『愛』というものが、これほど強く、いとおしく思える映画に出会えるなんて、とても幸福な週末だった。
今年観た映画の中でも、最上の一本。
★もうひとりの息子http://www.moviola.jp/son/ 

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