木彫りの馬。

「僕は今まで、誰かを本当に好きになったこと、ないみたいなんです。」
出会った頃に、Kはよくそう言っていた。人を好きになるという感情が、わからないと。
そんなKはこの頃、3週間くらい僕に会わないと、LINEのウサギのコニーが涙を流してクマのブラウンの写真を見ているスタンプを送ってくることがある。それを僕は、『寂しい攻撃』と呼んでいる。
福岡のホテルに着いた時、Kは珍しく紙袋を持っていた。
ふたりで飲んでホテルに帰ってからその紙袋を開けると、中には北欧の木彫りの馬が二つ入っていた。一つは僕に、一つはKに。
木彫りの馬は、北欧の御守りのようなもので、幸運を運んで来てくれる馬だと言う。
この手のぬくもりのある工芸品を、僕が好きだということを、どうしてあの、とぼけたKは分かったのだろうか?どうやってこんな木彫りの馬を見つけたのだろうか?
一年経っても、まだ、わからないことだらけです。
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