ブラジルの水彩画。

明日は大事なプレゼンが控えているので、朝10時から企画を持ち寄り打ち合わせをするはずが、入社以来一緒に働いて来た後輩のIから、プライベートのスマホに夜中にメールが来た。
「体調と精神的にも調子が悪いので、明日の朝の打ち合わせ。行けないかもしれません」
僕は、困ったなぁと思いながらも、それでも、こんなメールを夜中に送ってくるのは、よほどのことなのだろうと思い、「大丈夫だよ。ゆっくり休んでください。朝は僕がまとめておくから、夕方打ち合わせをしよう」と送った。
僕も、今回の案件では、ほとほと疲れていて、その日もほぼ眠れずに考えて朝を迎えた。タクシーで会社に行き、一人でアイデアをまとめていると、Iからメールが入った。
「今朝はありがとうございました。おかげさまで、だいぶんよくなりました。夕方、プレゼンが終わったら、ご連絡します」
心は毎瞬、膨らんだり、しぼんだりを繰り返している。目の前で何か出来事が起こると、それをどう捉えるかによって、自分の心も反応するものだ。高揚して胸がはじけそうな時もあるし、時には傷つくこともある。
Iが、疲れて挫けそうになったように、僕だって挫けそうになることもある。この世界には、完璧な人などいないのだ。
夕方の打ち合わせは、物凄いスピードで片付いて行った。僕も頭が冴えて来たし、Iも冷静になって論理性を取り戻し、新しい提案へとつなげることが出来た。
「こうしなければならない」とか、「こうであらねばならない」などの暗黙の社会人としての掟など関係ないのではないだろうか。他の人と比べる必要もない。我々は生身の人間なのだ。
疲れている日の朝は、大好きな『ブラジルの水彩画 Aquarela do Brasil – João Gilberto, Caetano Veloso e Gilberto Gil http://www.youtube.com/watch?v=-ID-7RyRAHQ』を聴いて出かける。実際の水彩画のことではなく、ブラジルの魅力を唄ったこの曲は様々な人がカバーしているけど、僕はこのバージョンが一番好きだ。
この曲を聴きながら、まだ訪れたことのないブラジルのことを思う。
世界は広い。目の前の問題は、実はそんなに大きなことではないのではないかと思うことが出来たら、その日もなんとかなる。

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