アジアンクィア映画祭3。

愛なんていらない

Rec

白夜

★『愛なんていらない』
オープニング作品は、トランスセクシャルものだった。この映画、トランスアメリカ並みに良くできているので、いつか公開されるかもしれない。
全く違う3つの時世のストーリー展開、それらが次第に重なり意味が解けていき、最後には、さめざめと涙が流れた。
若い時は、ゲイの話しか共感出来なかったけど、こういう トランスものやビアンものの映画でも、自分が共感出来ることが改めてわかった。
★ソ・ジュンムン プログラム『Rec』『蛍の光』
この二作品、あまりのせつなさに、むせび泣いてしまった。
『Rec』は、30歳と26歳のカップルが、つきあってから5周年のアニバーサリーに、ビデオカメラでその一日を記録しようとする話。観ている内に、自分が昔つきあっていた人との色々な懐かしい日々を思い出し、そして、今つきあっているKのことを考え、いつか来るかもしれない別れを考えたら、涙が止まらなかった。素晴らしい作品なので、日本での公開を願うばかりだ。
『蛍の光』は、老人のゲイの話。昔、止むを得ず別れてしまった二人が、老いた後、偶然に町中で出会う。それぞれに、自分のセクシャリティーを隠しながら社会で生きてきた二人は、お互いの来し方を見て、再び抱き合う。これも、老人の話とはいえ、人ごとですませられない共感性を持って見ることが出来る素晴らしい作品だった。
★イ=ソン・ヒイル監督トリロジー
この監督は、素晴らしい才能を持っている。映画を観終わった後に、しばらくこれらの映画のことで頭がいっぱいになってしまった。強いテーマ性がありながら、ゲイを演じる役者たちの繊細な心を見事に演出しているし、カメラワークがとても美しい。
『あの夏、突然に』
高校生と担任の先生が、ゲイバーで偶然遭遇してしまい、その顛末。夏の照りつける太陽に、高校生の真っ直ぐな眼差し、はち切れんばかりの性欲が描かれる。先生のジリジリと迫り来る恐怖感は、保守的な韓国で生きる同性愛者の心理を上手く表現している。
『南へ』
兵役の時に、関係を持った先輩と後輩の話。先輩は既に兵役を終えて、女性と関係を持つようになっている。後輩は、一日の外出令に、先輩との愛を確かめようとするが、先輩は、強烈なホモフォビアのため、自分の同性愛を受け入れることが出来ず、昔のようにはなれずにいる。二人の狂おしいまでの感情のぶつけ合いが、強く胸を揺さぶる佳作。
『白夜』
3年くらい前に、新宿2丁目のようなゲイの集まる町チョンノで、実際に起こったホモフオビアによるヘイトクライム。町中を手を組んで歩いていた二人のゲイが、何人かの男たちに暴行を受けて、半死の状態になった。その航空会社に勤める被害者が、親からも絶縁され、恋人も失い、2年後に復讐を胸に、ソウルに一日だけ戻ってくる。セクシャルマイノリティには生きにくい現代の韓国社会を取り上げつつ、繊細なゲイの心情を表現した傑作。この映画も、日本で公開されることを願うばかりだ。
この3日間、クィア映画三昧だったのだけど、本当に素晴らしい作品群だったと思う。また、再来年が今から楽しみだ。

アジアンクィア映画祭2。

朝から、自転車に乗って六本木へ。
短編集Bの中の、『おたくラジオ』という35分の短編が、ちょっと鳥肌が立つほど素晴らしかった。今もその余韻に浸っているくらい。
上海で、同じ会社に勤めて、それぞれ別々に暮らす日本人と中国人の男たちが主人公なのだけど、二人の関係は、ゲイと気づきながらも、それを受け入れ認められずにいる。そして、家から一歩も外に出られずにいる潔癖性の老婆と、彼女を支える老人医師の話が、ラジオで繋がってゆく。上海という大都会で暮らす二つのストーリーが、素晴らしい音楽と、映像によって重なり、言葉に出来ないせつなさを紡ぎだしていた。
中国人の男が、信じられないほど美しい。この映画、日本でまた、公開して欲しいな…
※本作はネットで公開された日から数えて一千万以上の再生回数を達成し、中国では大ヒットとなった。ネット上での評価は8.2、たくさんのコメントや賞賛が書き込まれた。また、2011年11月の中国における映画トップ50チャートでは「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」や「猿の惑星:創世記」をはじめ国内外の劇場映画をおさえてベスト10入りした。ゲイライフを応援するエンターテイメント誌「Badi」の表紙とグラビアを飾ったこともあるHIROが主演を務めている。
★アジアンクィア映画祭http://aqff.jp/2013/index.php