THE MASTER

本当に奇妙な映画だった・・・。
フィリップ・シーモア・ホフマンとエイミー・アダムス、そして、ホアキン・フェニックスが、揃ってアカデミー賞にノミネートされた映画『THE MASTER』。
新興宗教の教祖と、戦争から帰還して、自分のアイデンティティを見失った男の話。この二人の、奇妙としか言いようの無い愛情関係が、この映画の主軸になっている。
久しぶりのホアキン・フェニックスが、終戦を迎えて兵役が終わり、心を壊した男を素晴らしい演技で演じていた。彼は、生きて行く上で、人間が持たなければならないバランスを完全に失っている。
教祖役のフィリップ・シーモア・ホフマンが彼に何度も唱えるのは、『人間は、animalではない。animalとは違ってもっとずっと高い次元の生きものだ』という言葉。
『感情に支配されてはいけない。自分を完全にコントロールしなければいけない』
そう唱えながら、感情のままに生きる彼を導く、教祖フィリップ・シーモア・ホフマンも、やはり人間であって、抑えられない感情を時々爆発させるし、自分の弱さも垣間見せる…
人間は、みんな不完全で、矛盾を抱えた生きものだからであろう。
気持ちの悪いカルト宗教の教祖と弟子の話を、最後まで見守るように観ることが出来るのは、素晴らしい脚本と圧倒的な演技力の俳優陣、そして、類稀な才能の監督の力だ。
すべての人には勧められない映画だけど、見応えは十分にある。
★THE MASTER

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八月の鯨

25年前に観た映画を、もう一度改めて観てみようと思い、岩波ホールへ。
『八月の鯨』は、年上のリリアン・ギッシュ(93歳)が年下の妹を、年下のベティ・デイヴィス(79歳)が年上の姉を演じて話題になった作品。
メイン州の岬の見晴らしの良い家で毎年の夏を過ごす老姉妹は、それぞれの夫を失っている。目が見えなくなり、気難しくなった姉と、心根の優しい妹が、今ではふたりで暮らしている。
ハリウッド映画とは違って、とても地味な作品だ。大きな仕掛けはないし、登場人物も、ほとんどが老人。それでも、この穏やかな映画が25年の後、ニュープリントとなって蘇るには、それだけの価値があるからだろう。
25年も経てば、もしかしたら学生の頃に観た時と、違って見えるかもしれないと思ったら、やはり、感じるものは同じだった。
姉のベティ・デイヴィスは、一言で言うと、正に”Bitch”で、まるで年老いたゲイそのもの。
身につまされる…。
この映画で一番好きなシーンは、妹のリリアン・ギッシュが、月夜の記念日に、赤と白のバラを一輪ずつ飾って、亡くなった夫に話しかけるところ。
「情熱と真実。それが人生のすべてだと、あなたはよく言っていた」。ここも、はっきりと覚えていた自分に驚いた。
年をとることや、人生の普遍的な何かをフイルムにしっかりと焼き付けている稀有な映画だ。
★八月の鯨
http://www.iwanami-hall.com/contents/now/about.html
神保町に行くと、必ずと言っていいほど立ち寄るうどん屋『丸香』。久しぶりに、かけうどんとかしわの天ぷらをいただいた。
いつ行っても、ほとんど並んでいて、店内は賑わっていても、きりっと潔い空気に満ちている。いつでも清潔な店内は、改装したようで、更にきれいになっていた。ここのうどんは、透き通るようで美味いけど、出汁も美味しいと思う。棚にいりこの段ボールがあったから、いりこ出汁なのだろう。
店内は写真撮影禁止のため、うどんの写真は撮れなかった。
★丸香
http://s.tabelog.com/tokyo/A1310/A131003/13000629/

幸せの青い花。

東京では、数日前から桜が咲き始めている。この頃は、胸がドキドキして、居ても立っても居られない。バジルなど寒さが苦手な植物を植えるのも、桜が咲き出すこの頃。
昨日は、帰りに東急本店の屋上に寄って、草花を買って帰って来た。
ベランダのシンボルツリーであるジューンベリーは、桜よりほんの少し遅く開花するけど、足元にいつもその時期の草花を植えている。
今年は、先日このブログであげたように、世の中では数が少ない青い花を数種類植えてみた。ホワイトガーデンというのはよくあるけど、言うなれば、ブルーガーデン。
左上から時計周りに、
ミヤマホタルカズラ
斑入りのブルーデージー
プルモナリア
ネモフィラ
忘れな草
矮性の矢車草
真ん中に、青い色が引き立つように、補色である黄色のナスタチウムを。この花は、食用にも出来る太陽の恋人のような花。春の陽射しを存分に浴びて、primaveraを体現しているかのようだ。
草花をいくつか2千円くらい買っただけで、こんなに幸福な気持ちになれるから不思議だ。陽射しを受けながら、土をいじるだけで身体中が喜んでいるのがわかる。
Kは、四月の初めに、本来なら桜が咲いているだろう…と思って、はりきって東京に来るのだけど、その頃は、ソメイヨシノは跡形もなく散っていて、八重桜が咲いているくらいだろうか…。
かわいそうなKのために、幸せの青い花を植えた。その時までに、綺麗に育っていてくれたら、うれしいなぁ。
この写真をKに送ったら、朝方まで飲んでいたので気持ちが悪いと言って、LINEでゲロを吐いている坊主のイラストが送られて来た。本当に、困った子だ。

ある海辺の詩人 -小さなベニスで-

久しぶりに、このまま何時間でも、この映画を見ていたいと思った映画を観た。『ある海辺の詩人 -小さなベニスで-』は、今年、僕が観た映画の中で、最も好きな映画の一つにあげられる。
ヴェネツィアの外れの、小さな港町のオステリア。そこへ中国人の女性が出稼ぎにやって来る。片言の言葉しか通じ合わないけれども、イタリア人たちと触れ合う内に、彼女と彼らの毎日が色づき、膨らみ始める。
アカデミー賞のような映画は、実は、アメリカにおける一つの物差しでしかないということを改めて思い知らせてくれる映画だ。
世界には、多様な映画の表現があり、イタリアには、これほどまでに繊細で美しい映画をつくる文化があるということを、我々に知らせてくれる。
カメラワークが恐ろしいくらい完璧だ。どこのシーンも詩のように感じられる。
過剰でない音楽もいい。そして、世界で最も美しい言語の一つと言われる、イタリア語と中国語の響きが混じり合うところも美しい。
役者たちも素晴らしい。まるであのオステリアが、今もあの町キオッジァにあるように思える。
この映画は、何か、美しいものを観る者に遺してくれる。それは、まさしくこの映画が、詩そのものだからだろう。
★ある海辺の詩人 -小さなベニスで-
http://www.alcine-terran.com/umibenoshijin/

シュガーマン 奇跡に愛された男

この世界で現実に起こった話が、想像で作られた物話以上に奇跡のように感じられることが稀にある。
久しぶりにこの上なく美しいドキュメンタリーを観た。アメリカの伝説のミュージシャンを追った『シュガーマン 奇跡に愛された男』という映画。
60 年代後期にデトロイトに現れたロドリゲスは、天才的なミュージシャンと思われたが、二枚のアルバムは全く売れないまま、時代に忘れ去られる。
しかし、その労働者の底辺を味わい尽くしたような音楽が、数奇な運命を辿り、アパルトヘイトの時代の南アフリカに渡り、爆発的なヒットを飛ばすことになる。
その後、南アフリカの二人の男が、死亡説まで流れるロドリゲスを探し求めるというドキュメンタリー。
この、無名のシンガー『ロドリゲス』の作る歌は、弱者や労働者階級、社会の底辺で生きる人々を歌っている。
映画が進むうちに、ロドリゲスの、しっかりと地に足のついた生き方が現れてくる。
無名のアーティストであれ、僕は、こんなに強く美しい人がいたことに驚愕した。
アカデミー 長編ドキュメンタリー部門賞
★『シュガーマン 奇跡に愛された男』
http://www.sugarman.jp/

いつもの朝ごはん。

バラの芽吹き

昨日は終日撮影だったので、洗濯しか出来なかった。今日は朝から、ずっとベランダでバラの世話をしていたので少し遅めの朝ごはん。
お米をといで、野菜を水に放ち、冷凍庫からサンマと明太子と納豆とお出汁を出し解凍、水菜の煮浸しとクレソンの胡麻和えを作り、ご飯を土鍋で炊いて(また土鍋!)、ご飯が炊けたら、サンマを焼きながら、エッグベーカーで卵を焼き、ワカメの味噌汁を仕上げる。
コップに入った菜の花は、今晩のおかずになる予定。
特別な料理はなんにも無いけど、うちで食べる朝ごはんが、一番美味しいと思う。
死ぬ前に何を食べたいかと聞かれても、家で炊いた白米と、味噌汁と、ちりめん山椒が食べたいと答えるな。僕は。

SHAKER

シェーカーの家具に出会ったのは、僕がまだ、大学生の頃だろうか。機能を徹底的に追求して作られた形の美しさに驚き、この入れ子状に出来る箱を手に入れた。
シェーカー教徒は、19世紀のアメリカで50〜100人の共同体を作り、その中で農業と製造業に分かれ、日の出とともに目覚め、夕食までそれぞれに与えられた仕事をこなして暮らしていた。
彼らは、簡素であることだけが美徳と考えているようには、僕には思えない。彼らの作る料理を見ると、シンプルであるけれどもとても考えられてあり、厳選された素材を使いつつも、贅沢に見える。
彼らは、『生きるために働く』というよりも、『働くことが、生きること』という考えだったという。
今、シェーカーの箱は、僕のキッチンで様々な使い方がされている。小さな箱は、調味料が驚くほどぴったりと収まる。大きな箱はトマト・蟹・ツナ等の缶詰などの保存用食品。真ん中の箱は、色々な種類のお茶を。
箱という形に収めるということは、限界を設けることでもあり、調味料や缶詰やお茶が思いつきで増えて行くことを防いでくれる。この箱に入らないほどの缶詰など、使いきれずに長い間置きっ放しにするだけだし、都会で暮らす僕には、実際には必要無いのだ。
この箱が外に出ていても、様々な食品の汚いデザインのパッケージを目にすることも無く、それでいて簡単に取り出せる。ただ置いてあるだけで自分自身で美しさの秩序を保っていて、その姿を眺めるだけで、穏やかに心地よさを感じる。
シェーカー教徒のように、今の僕には暮らすことは出来ないけど、豊かさとは何か、分からなくなっている今の時代に、彼らの暮らし方や生き方を知ることは、とても興味深い。

同源楼

前菜の盛り合わせ

豚と山芋の黒酢豚

麻婆豆腐

中華料理の中で、僕は、四川料理が一番好きだ。北京でも、上海でも、広州でも、一度は四川料理の店で食事をしたいと思う。
それは、日本にはあまり本場の四川料理が入って来ていないから。日本に形を変えて馴染んでいるのは、担々麺や麻婆豆腐だけど、それも日本人のためにすっかり別物にアレンジされている。
この店では、『唐辛子の辛さである「辣味」(ラーウェイ)と山椒の一種である花椒(ホアジャオ)の他、日本ではあまり使っていない「麻椒(マアジャオ)」も使用している』と書いてあるように、本格的な辛さの四川料理をリーズナブルに食べることが出来る。
お得なランチがあるため、ランチで利用することが多い人気店だけど、運よく予約が取れたので、久しぶりに、S太郎とK太郎と三人で『同源楼』へ。
四川料理は、実はすべてが辛い料理ではなくて、辛さ以外にも様々な味のバリエーションが楽しめる。
オーダーの時に注意しなければいけないことは、辛い料理を食べに来たとしても、辛い料理ばかりで埋め尽くさないように、半分くらいは辛味の無い料理を頼むことだろう。なぜなら、本場の四川料理は、あまりにも辛いから。
辛味は、元々、人間の味覚ではなくて痛覚に訴える感覚だ。あまりにも辛いと、美味しいなどという次元を超えて、身体が痛みとして捉えるだけで、食事を楽しむどころでは無くなってしまう。
いつも、この三人で食事をすると、今度はいつ台北に行けるのか?とか、シンガポールと香港はブスの巣窟だとか、4月からゲイクルーズでアジアをS太郎が周るとか、K太郎が韓国にはまりそうだとか、お店の人などおかまいなしに、オカマ話に花が咲く。
1月に、シンガポールに三人で行くという話は、僕の仕事で行けなくなったので、今度は台北か香港かという話で盛り上がった。いい年したゲイ三人の会話は、どうしていつも、sex and the cityのようになってしまうんだろう?と、二人のおばさんを見ながら思った夜。
いずれにせよ、俺は、キャリーだな。ふっ。
★同源楼
http://s.tabelog.com/tokyo/A1308/A130801/13041758/

土鍋番長。

惚れ惚れする色艶…土鍋のこと。

雨が上がり、風が冷たい一日だったので、「クレソンと豚バラ肉のしゃぶしゃぶ」をいただいた。
昆布出汁ではなく、鳥のスープで。この時期、やたらといい状態のクレソンが山盛りで売られているので、つい手が伸びてしまう。
クレソンは、生でも、さっと湯通ししても、お浸しにしても、そしてクタクタに煮込んでも美味しい。
中国に行くと、大抵は火を通して出てくるけど、日本では生で付け合わせで食べることが多いと言うと、中国人の友達が驚いていた。フランスではサラダが多い。
実は、土鍋好きで、ごはん用の土鍋もすべて入れると、10個くらいはあると思う。前につきあっていた人には、「土鍋料理屋さんでもやるの?」と言ってよくからかわれていた。
自称『土鍋番長』。
余分な油を使わずに、様々な旬の食材の組み合わせと、出汁やスープの掛け算で出来る健康的な料理には、限りがないと思える。

玉笑

美味しい店オーラが…

出汁巻き玉子

粗挽きせいろ

東京では強風が吹き荒れる中、福岡では桜が開花したらしい。
仕事が一段落したので、午後は半休をいただいた。なんだか無性に蕎麦が食べたくなり、渋谷の『玉笑』へ。
出汁巻き玉子を頼み、先ずは生ビールを。ここの出汁巻きは、卵の味が感じられる薄い味だ。
のんびりと食べながら、お酒が飲みたくなり、菊姫をいただいた。やがて粗挽きせいろが運ばれて来た。所々透き通り、蕎麦も香り立つ。思わず蕎麦をおかわりしてしまった。
外は春の嵐。日本酒に、出汁巻きに、蕎麦。完璧な組み合わせかもしれない。こんなに幸せな平日の昼間も久しぶり。
この店、渋谷の住宅地にあるのだけど、お店の外観から、美味しい店オーラが立ち上っている。さすが、ミシュラン一つ星。
気持ちよくなって、近くのcook coopへ。ここは、とても小さな料理本のセレクトショップ。時々、素晴らしい洋書もあるし、かなりマニアックな本もあるので定期的に顔を出している。京都の食の本を買ってのんびりと帰ってきた。
この時期、なぜか、蕗や、菜の花や、ウドなど、苦味を感じる野菜が食べたくなる。お花見に、何を作ってゆこうかと、今からぼんやり考えているところ。
★玉笑 (たまわらい)
http://s.tabelog.com/tokyo/A1306/A130601/13129390/
★cook coop
http://www.cookcoop.com/